みぃちゃん

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取り敢えず最初に指差された数学の問題に目を通す。 直ぐコイツが見ていたと思われる教科書に目をやる…が、そこで俺は愕然とした。 溜め息を吐いてから教科書を取るとペラペラとページを捲り目的のページを開いて差し出す。 「オラ、ここ。どこ見てんだよ、一年生」 「え…?ここ?」 「そこの公式見ながら大人しく問題解いてろ」 それだけ言って俺も残りの問題を解き始める。 暫くするとまた奴の声が響き渡るんだけども。 「すご───い!私が見てたページと全然違う!!」 「お前マジでどこ見てんだよ。教科書見てる意味全然ねぇじゃん」 嫌味を言ったつもりなのにコイツはずっと笑ってる。 「アハハ、本当ですね。八重沢先輩居なかったらずっと解けなかったかも」 「そうかもね」 そこで漸く俺は全ての問題を解き終わって、ペンやらプリントやらを纏めて仕舞った。 「あれ?帰る系ですか?」 「つか自分もそろそろ帰ったら?あんま遅くなると危ねぇよ」 バッグを持って立ち上がると目の前の一年生もいそいそと片付け始めて立ち上がった。 「はい!そうします!!帰りご一緒してもいいですか?」 「どーぞご勝手に」 「あと…これ受け取ってください!」 差し出されたのはソイツの名刺。 取り敢えず受け取ってみる。 「一年の愛原ミミです!みぃちゃんって呼んでくださいね!それから良かったらメールください」 みぃちゃんって…俺がか? 無理があると思う。 「まぁ…気が向いたらね」 「えぇ!?連絡くださいよ!ランチくらい奢りますからー」 「だっから図書室で騒ぐなっつーの!」 そんな文句を溢しながら騒がしい俺らは図書室を後にする。 そんな俺らのやり取りを見ていた人が居た事に俺は気付かなかった。 「あの子……あの時の───。良い所あるじゃない」 本当に黎学だったのね。 あっちは私に気付いていないみたいだけど。 また、何処かで会えるかしら────?
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