再び

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怪訝な表情の彼にそんなに凝視してしまったかと我に返り、ふるふると首を左右に振った。 「あそ…つかまだ居るなら座れば?」 そう言って自分の隣を叩く仕種に釣られるように私は彼の隣に座る。 チラリと彼の顔を覗き見てみると前は暗くて気付かなかったけどとても端正な顔立ちをしていて、有名人だと言う事に深く頷けた。 中性的なその顔は女の私から見てもキレイで栗色の髪もとても良く映えている。 「………キレイ」 「は?」 素っ頓狂な彼の声に思わず声に出てしまっていた事に気付き、私はしまったとばかりに顔を歪めた。 「いや…その、キレイだなって。八重沢君」 「……何言ってんだか」 そう言って片眉を下げて笑う儚げな彼の笑顔は本当にキレイで、私は目が離せなかった。 「ねぇ」 「なに?」 「八重沢君ってあだ名とかないの?」 彼は少し考えるように視線を上げ暫く黙っているも特に見つからなかったのか首を捻らせた。 「ない…?」 「どうして疑問系なのよ…あだ名あったらそっちの方が覚えやすいかと思ったんだけど」 「だいたいみんな下の名前で呼ぶかな。あ、あと八重って呼ぶ人もいるか」 そこで私は漸く気付いた。 彼の名字は覚えていなかったけど名前だけはしっかりと記憶に刻まれていたのだ。 「…私も名前で呼んでいい?」 「別に?好きに呼べば?」 「じゃあ…空君」 そう呼ぶと彼は大きな瞳で私をジッと見た後緩く笑みを浮かべた。 彼なりの返事なのだろうと解釈して私も自然と笑みが溢れた。 「そろそろ部屋戻る?もう明け方だけど」 「え?やだ、もう全然寝れないじゃない」 気付くともう朝の四時を過ぎていて慌てて私は立ち上がる。 「今から寝たって二時間は寝れんじゃん。十分っしょ」 そう言う彼に私は唖然とした。 二時間って。 「あなたはいったいどんな生活してるの?」 「別に至って普通の生活。ホラ、帰ろ」 そう言って雑誌をマガジンラックに仕舞ってから談話室を出て行く彼の後を追って私もその場ん後にした。 「おやすみ、空君。ちゃんと寝るのよ」 「ハイハイ、おやすみなさーい」 女子寮と男子寮への別れ道そんな挨拶を交わして部屋へと戻る。 「空君か…」 本当不思議な子。 もっと話がしてみたい。 彼をもっと知りたい───。
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