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最早溜め息しか出ない状況に俺は肩を竦めた。
「つか…奥山ってあの奥山?」
「だろうね。女ったらし風紀委員長」
風紀委員は俺にとっちゃ天敵でしかない。髪から服装から全てにおいて注意される。
「まじかよ……勘弁して欲しい」
「あの人女にはやたら優しいから人気高いよな」
「あぁ…そんなん聞いた事ある」
「空君」
張り出された紙の前、吉田とそんな話をしていると背後より凛とした透き通った声が俺を呼んだ。
「あ」
振り返った先にいたのは同じ会計に選ばれた宮野先輩。
「今回はやるんでしょうね?」
「あれ?俺の事知らなかったのに良く知ってますね、今までの事」
「今あなたの事で噂は持ち切りよ。今回こそ辞退しないで欲しいって声が大多数」
そんなに噂になってんのかと思うと思わず乾いた笑い声が漏れた。
「そう言う宮野先輩はやるの?寮生会」
「選んで貰ったからには頑張りますとも。私はやる気満々よ」
両手を握ってそのやる気度合いを見せる様子に口許が緩みそうになるのを口を結んで堪えつつ、くるりと踵を返してゆっくりと男子寮へ向かって一歩踏み出す。
「空!?おま…」
「やりますよ、今回は」
「!」
「よろしく、先輩」
顔だけで振り返ってそれだけ言って部屋へと向かった。
後ろから慌てたように吉田が付いて来る。
「あの人が宮野李里?」
「おー」
「へぇー…可愛いじゃん」
「!」
こういう時の直感は悪くない方だと思う。
きっと、吉田は─────…
「気になんの?」
「うん、仲良くなったら取り持ってな」
「………………。」
特に返事もせず部屋へと戻った。
面倒臭いけど取り持つくらい別にどうってことない……なのに何だろう。
素直に返事出来ない自分がいる。
「素直じゃねぇなー…空ちゃん」
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