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三年はみんな仲が良さそうな雰囲気。
そんな空気に俺と涼は顔を見合わせて笑った。
「2-Cの澤崎涼です。半年間よろしくお願いします」
「澤崎って野球部エースの?この前の試合俺見に行ったぜ」
俺も見に行った。見入り過ぎて朝練遅刻して怒られたっつーエピソード付きで。
「今年は有名人が多いな─────なぁ、八重沢君?」
「!」
委員長からの名指しに思わず眉根が寄る。
「今回は辞退しなかったんだな……俺が居るからするモンだと思ってたけど」
「それは辞退して欲しかったんだけど───って受け取っていいんスかね?」
皮肉めいたように尋ねると委員長はニッコリと効果音が付きそうな程の笑みを浮かべてから────
「当ったり前だろ!寮生中のかわい子ちゃんの注目の的になれると思ってたのに、お前が居たんじゃ俺が目立てねぇじゃねぇか!!」
「へ?」
物凄く悔しそうにそんな事を言うモンだから思わず素っ頓狂な声が出た。
「奥山…アンタ見苦しいわ」
「うるせぇ!まぁ、半年間よろしくな」
「…よろしくお願いしまーす」
予想以上の委員長の女好き加減に笑いそうになる。
そんな中隣に座っていた長谷部先輩が俺の腕を軽く叩いた。
「ねぇねぇ、八重沢君」
「?」
「八重沢君の名前のそらってあの空?」
そう言って天井を指差す彼女にコクリと一度頷く。
「そッスよ」
「そっかそっかー…じゃあクゥだね」
「は?」
思わず声が漏れる。
美人のクセに不思議な人だ。
「八重沢君のことこれからクゥって呼ぶ。いいでしょ?」
「………まぁ、いいけど」
犬みたいって文句の一つでも言ってやろうかと思ったけど、余りにもニコニコと笑いながら嬉々とそんな事を言うもんだから何も言えなかった。
「へへ。よろしくね、クゥ」
本当はね、ずっと話してみたかったの。
私だけの呼び名が欲しかった。
クゥの存在は何故だか私の中では凄く大きな存在だった。
理由は解らないけど───こうやって近くで話していればいつか理解出来る気がする。
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