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「そんで寮生会の顧問…っつーの?我等が朝倉蓮先生が受け持ってくれました!拍手!!」
その合図で全員パチパチと拍手を送る。
「盛大な歓迎ありがとう。まぁ私はあんたらに関与する気はないからしっかりやるようにー、以上」
漆黒の長い髪と俺らと同い年くらいに見える顔立ち、美術の朝倉先生も青涼寮だったんだなと今初めて知った。
「今日は顔合わせのみそだからここら辺でお開きな。また召集かけっからそん時はよろしく!」
散り散りに室内へと戻って行こうとする中裾を引っ張られる感覚に俺は視線を落とした。
「ねぇ、クゥ。ちょっとお話しない?」
「……何、長谷部先輩。暇なの?」
そう言うと彼女はムッとした顔をして俺を見上げる。
「ちょっと、そんな他人行儀な呼び方しないでよ。瑠衣お姉様って呼んでくれていいのよ」
「何キャラだ」
若干の危険を感じた俺は不意に違う方面から感じた視線に顔を向けた。
そこには呆然とした表情でこっちを見ている宮野先輩が居て、しめたとばかりに彼女を使わせてもらった。
「すんません、長谷部さん。俺ちょっと宮野先輩に用あるんスよ。だからまた今度で」
「えぇ?」
驚いた声を挙げる宮野先輩などそっちのけで彼女の背中を押して廊下へと出る。
だから俺は悔しさを露わにする長谷部先輩を目撃することは無かった。
「ちょ…空君!何なのよ!?」
「いや、ごめん。ちょうど居たから使わせてもらった」
あっけらかんと言ってのけるとそれこそ宮野先輩は呆気に取られたような表情を浮かべてから盛大に笑い出した。
「本当にもう……素直なんだか何なんだか。お喋りくらい付き合ってあげたらいいのに」
「やだよ、面倒臭い」
「特に私に用事も無いのにあんな断り方しちゃって、バレたらどうするのよ?」
そんな問い掛けに俺は胡散臭い程の笑みを浮かべてみせる。
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