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────四年前
「おーい、そーらー君!」
昼休みの時間になり、私はいつものように親友の七瀬郁と二人食堂へと向かっていた。
その途中の廊下で最近何かと絡むようになった彼の名前を呼ぶ女の子の声が耳に届く。
「あ、八重沢じゃん。やっぱ目立つよねー、アイツ」
郁の言葉に深く頷く。
「一緒にいるのってサッカー部の奴よね。アイツも何かと目立ってるから二人揃うと凄いわ、本当」
本当、二人揃いも揃ってよく目立つこと───それに彼に話し掛けた子もとっても可愛い。
垂れ目が印象的。
そんな事を思いながら郁と二人歩んでいると、緩慢な足取りのその三人には簡単に追い付いてしまうのは致し方ない事で。
声を掛けるべきかと考えている最中、郁がサッカー部だと言った男の子が振り返って驚いた顔で私の事を見た────と、思ったら物凄い勢いで空君の制服を引っ張って私たちの存在を知らせる。
そうしたら彼は物凄く気怠そうに女の子と二人こっちへと振り返った。
彼の制服姿を見るのが初めてだからだろうか……一瞬心臓が跳ねたのは紛れもない事実。
「あぁ…どーも」
「何よ、八重沢。その気のない返事は」
郁は軽い口調でそんな事を言いながら彼の頭を軽く叩く。
「コイツ寝起きなんスよ」
「そーゆーこと」
確かに若干寝ぼけ眼かも。
そう思ったら何だか笑えてきて、一人口許を緩ませた。
「何笑ってんスかー?宮野先輩。エロ」
「エロくて何が悪いのよ!」
「認めるんかい」
そんな会話をしているともう一人の男の子が彼を肘で小突く。
空君は一瞬誰にも気付かれない程度に面倒臭いと言わんばかりの表情を漏らしてから他の二人を顎で差した。
「……この二人俺のクラスメイト。吉田と森本」
「吉田圭史です、はじめまして」
「森本依です、はじめましてー」
ちょうど階段に差し掛かった所、食堂は別館1階にあるからこのまま下へ行くはずなのに空君は一人階段を登ろうとした。
「空君食堂行かないの…?」
控えめに問い掛けると彼はチラリと私を見てから直ぐまた前を見据えた。
「俺パス。4人で行って来たら?」
そんな素っ気ない返事と共に彼は階段を登って行く。
私は彼の姿が見えなくなるまで彼から目が離せないでいた。
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