勘違い

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空君に屋上で会った日から一週間が経った。 あれから寮生会やらで顔を合わせる事はあっても話す事は全く無かった。 避けられてる───そう思わざる得ない。 今日も寮生会の打ち合わせがあり、19時頃まで話し合いが続いた。 「そんじゃ、お疲れさん」 奥山君の掛け声でみんな一斉に気の抜けた声を出すのは日常茶飯事。 それに加えて奥山君、澤崎君、空君の漫才のような会話が始まる───筈なのにその日は違った。 すぐさま空君は携帯を取り出し誰かに電話を掛ける。 「お疲れ。うん、今終わった」 空君が毎日遊び呆けてることはみんな知っている……が、こんな連絡をするところは見た事が無くて。 全員興味津々の視線を向ける。 「今何時?7時?そんじゃ30分後にはそっち行けるから。うん、え?パフェ?ハイハイ、今日は奢るっつったから食っていいよ。うん、じゃあまたね」 電話を切った瞬間全員の視線を真っ向に浴びた空君は驚いた表情で全員の顔を見た。 「え、何スか?」 「誰だよ、お前ー。彼女か?」 奥山君のその問い掛けに私の心臓は大きく脈打つ。 空君はチラッと私を見てからゆっくりと立ち上がり軽い口調で否定してから足早に去って行った。 「んなわけないって。友達友達。そんじゃ、お疲れーッス」 空君が去った後の室内はそれはもう凄い大騒ぎだった。 「絶対彼女よね!」 「彼女以外有り得ねぇだろ、あの急ぎよう」 「えー、でもクゥに彼女なんて聞いた事無いけどー」 空君のルックスからしたら居ても全くおかしく無いんだけど、でも彼は恋愛面に関してはさほど興味を示さない人だと思ってたから居るなんて想像したことすら無かった。 ねぇ、本当に居るの? 居るのに私にキスしたの? そんな自問自答を延々と繰り返していた。
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