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彼は何とも思っていないのだろうか───。
「…………ごめん!」
「!」
「何言っても信じて貰えないだろうけど…俺お前と仲直りしたい!」
そう言って深々と頭を下げる吉田君。
それに対して空君はと言うと……
「…………何が?」
「へ?」
「は?」
「え?」
事情を知る私も郁もこれに関しては間の抜けた声を挙げてしまう。
「ちょ、ちょっと空君?」
「八重沢、アンタ忘れたの!?コイツアンタに酷い事言ったのよ!?」
詰め寄る私と郁の剣幕に一瞬空君はたじろぐものの少しの沈黙の後、漸く理解出来たのか小さく声を挙げた。
「………あぁ、あれか」
「そうよ、あれよ!ここは一発ガツンと…」
「いいよ、別に」
郁の一押しも虚しく空君はあっけらかんと言葉を返す。
「八重沢!!?」
「つか俺ら喧嘩してたの?」
「え…だってお前話し掛けてくれなかった…」
「普段俺から話し掛ける事なんてある?」
「……………ない」
確かに彼が自分から話し掛ける事なんて滅多に無い。
全ては吉田君の勘違いだったと言う結論。
「別に怒ってねぇよ?まぁ……ボク繊細なんでちょっと傷付きましたけど?」
「………ゴメンナサイ」
冗談口調で言う空君だけどあれは本当だろう。
屋上の彼を見たらこの言葉が嘘だなんて思えない。
「器の大きい男だね、八重沢って」
「!」
羨望と尊敬が入り混じったようなそんな目で郁は彼を見つめた。
「アイツ見てると…自分が凄いちっぽけに思えてくる」
うん…
私も自分が凄い小さな人間に思えてくる。
「強いね、八重沢は」
「……強い、のかな…」
それは解らない。
何か違和感を感じる時があるの。
頑張って
頑張って
何かを必死に堪えているような
そんな風に私には見える。
彼のココロの奥に何があるのだろう────?
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