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今日は終業式だった。
この時期の終業式の日には黎学には毎年恒例のイベントがある訳で、今年も勿論例外無く行われる。
そう、黎明納涼祭と称した肝試し大会が。
「子供騙しだよね、面倒くさ…」
「ちょっと、どこの年寄りー?」
森本のツッコミはごもっともだけど面倒臭いもんは面倒臭い。
「じゃあ俺と同じくらい面倒臭がりのもっつぁんは今回は面倒臭くないっつーこと?」
「いやいや八重つぁん、もっつぁんだって超面倒臭いよ。ガチで」
「ガチか」
「そうガチ」
そんな俺らの肝試し前とは思えない程緊張感の無い会話に吉田は苦笑を浮かべる。
「お前ら緊張感ねぇな…森本さん、怖くねぇの?」
「え?幽霊なんかよりもっつぁんのが数倍怖くね?」
「そうそう、だから私全然怖くなー……っておい!こんなか弱い乙女を前にして何てこと言うんですか、空さん!」
「………どこにか弱い乙女が?」
「擽りの刑だ─────!!!!!」
段々と騒ぎが大きくなる俺らの会話を制するように吉田が割って入る。
ナイスだ、吉田。
「あーあー、もう始まるみてぇだぞ。森本さん確かAグループだったよね?呼ばれてるよ」
「まじでか、じゃあ行ってきまーす」
そう言って去って行く森本を見て小さく溜め息を吐く。
「サンキュー」
「本当お前ら仲良いよな」
仲良いのか何なのか……
彼女曰く俺らはマブダチで俺の双子の妹らしい。
……男女間の友情って成立するもんなんかね?
その辺よくわからん。
「空何グループだっけ?」
「俺Z。最終組」
「まじか。長ぇな」
この肝試しは十人一グループで適当に組まれていて、順々に中を見て回ると言うルールらしい。
ちゃんと全エリアを見て回れたか一々ノートに名前を書き込まなきゃいけねぇからズルが出来ない……厄介なシステムだ。
「お、Rの番だ!そんじゃ俺行って来るなー」
「おー」
もうRまで来たのか。
案外早いなぁなんて思いつつ壁際に移動して寄りかかりながらしゃがみ込んで携帯を弄り始める。
最近アプリにハマりまくってる俺はそこからZの番が来るまで確実に周りが見えなくなっていたのだった。
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