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そう言って再び彼女に向かって手を差し出すとはにかむような笑みを浮かべてから俺の手を掴む。
やっぱり何処かくすぐったくて。
こんな感情初めてだ。
「……ありがと、空君」
「いいえ、どーいたしまして」
ゆっくりと彼女の手を引いて歩き始めれば直ぐ目の前のパソコン室のドアを開いて中へと進む。
「…ねぇ、霊感とか無いわよね?」
思わぬ問い掛けに俺はその時ばかりは柄にも無く素になってしまった。
瞳を丸めて振り返り直ぐ彼女から視線を逸らすものの無意識に眉根が寄ってしまう。
「……霊感?…あったらいいなとは思う」
「もう!それは無いって言う解釈で良いのよね。ねぇ?」
騙されたとでも思ったんだろう。
軽い背中への衝撃を感じるも、俺は何処か上の空。
それでも悟られないようにと乾いた笑い声を挙げながら同意を求めるように問い掛ける。
これは一瞬素になってしまった事への焦り。
バレないように
バレないようにと────…
「まぁ…そういう事ッスね。でもさ、あったらいいなって思わない?」
「いえ、全ッく。そんなモノ手に入れて何する気よ」
表面上では茶化すようなそんな自分を演じてみるけれど、ココロの中は気が気でなかった。
この時は酷く焦っていたんだと思う。
余り冷静な判断が俺には出来ていなかったんだ。
「…なーいしょ」
「そ…そこは言いなさいよ、あらぬ妄想ばかりが駆り立てられるじゃない」
懐中電灯で俺の背中を軽く小突いてツッコミを入れる先輩。
何か良からぬ事を考えたらしい。
「なになに?何妄想したんスかー?」
「絶対こういう時「昔ここで事故が遭ったんスよ」とか真顔で言いそう。嘘は吐かない子だろうから」
それは俺の真似をしたつもりなのか…
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