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そう言うと彼女は俺の手をギュッと握りしめた。
瞬間的に振り返ろうとしたけれど、そのまま前方を見据え続けた。
────啜り泣く声が耳に届いたから。
この十七年間、俺は人の死に直面したことが無い。
五月蝿くてウザイけど賑やかで超健康的な親父達に囲まれて来たから。
彼女はどれほど苦しい思いをしたんだろう。
どれほど寂しい思いをしたんだろう。
考えれば考える程何ともいたたまれない感覚に陥る。
だから俺は彼女の手を強く握り返す事しか出来なかったんだ。
「────ありがとう、空君」
お礼を言われる事なんて何もしていない。
こんな時何をしていいのか解らない自分が本当にちっぽけに思えてくる。
「…………別に」
素っ気ない返事しか出来ない自分がすげー悔しいよ、先輩。
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