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────部長が僕を呼ぶ時は良くない話の時だ。
そう解りながら部長の背について行くことは本当に辛い。
今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。
かと言って逃げ出せる訳も無く部長の足が止まるまで僕はついて行くしかない。
そして部長が足を止めたのは体育館裏だった。
「………山本。お前いつになったら辞めんだよ?」
「え?」
唐突な物言いに僕の頭はついて行かない。
「お前才能無ェんだよ。チビだし力も無ェし…うちの部の恥曝しだって気付かねぇ?」
「…………………。」
足が竦む……思った以上にダメージは大きいらしく、立っていられない程僕はショックを受けていた。
「お前みたいなグズいらねぇんだよ」
お願い
お願いだからそれ以上は言わないで
「さっさと…………!」
そこで部長の言葉は途切れた。
ゆっくりと顔を上げると驚愕の表情を浮かべた姿が目に映る。
「………何してんスか?部長」
「!」
ドスの効いた低い声。
振り返った先に居たのは────…
「や、八重沢…」
物凄く不機嫌なのであろうオーラを醸し出した八重沢先輩が部長を睨み付けて立っていた。
「何してんスか?」
「い、いや…別に」
しどろもどろする部長に八重沢先輩は態とらしく溜め息を吐く。
「…部長が指示出してくんないとみんな遊びほうけますよ。さっさと戻って指示お願いします」
「わ、悪かった。直ぐ行く」
凛とした声でそう告げると部長はいそいそと体育館へと戻って行った。
そんな様子を見て彼は再び溜め息を吐く。
八重沢空────僕はこの人が苦手だ。
何を考えているのか全く解らないしこの人も何処か人を馬鹿にしているような気がしてならない。
先輩達が言っていた。
この人は完璧過ぎると。
それは僕も思う。
底も何も見えない───天才だと思わざるを得ない。
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