8人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「あれ?宮野先輩でしたっけ?」
「!…あなたは西川君」
背後から名前を呼ばれて振り返ると空君の後輩である西川君が立っていた。
「空先輩見ませんでした?部長追いかけてったっぽいんスけど」
「空君なら───」
今まさに殺伐とした空気が漂っている方向を指差すと西川君も一緒に物陰から様子を伺う。
「…部長が指示出してくんないとみんな遊びほうけますよ。さっさと戻って指示お願いします」
凛とした声がその場に響き渡る。
三年の彼は私達に目もくれず横を通り過ぎて行き、いそいそと体育館へと戻って行った。
「良くある事なの?こういうの」
「あー…まぁ…そうッスね」
歯切れの悪い返しに何となく直感が働く。
─────この子も一緒になってやってるんじゃないかと。
そこからの空君はとても先輩らしかった。
「すげーな、空先輩」
西川君は何か眩しいものでも見るかのような瞳で空君を見る。
「本当に慕ってるわよね。空君の事」
「当然ッス」
そう言う西川君の瞳はキラキラと輝いていて、空君の存在の強さを身にしみて解った気がした。
「空先輩!」
後輩の子と二人こちらへと戻って来た空君を出迎えると、一瞬私達を横目で見てから西川君の頭にポンと手を置いた。
「威勢が良いのは良い事だけど、言って良い事と悪い事くらいちゃんと判断しろよ」
それだけ言って体育館へと戻って行く空君の背を見送る。
────あぁ、何て眩しい子なんだろう
「本当、器の大きい奴だね」
「…………うん」
その背を見送る度感じるの。
彼との距離の遠さを。
いつまで経っても追いつけない。
眩し過ぎるよ───────空君。
最初のコメントを投稿しよう!