夏休み

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暇人の集まり会。 暑さを凌ぐかのように俺、吉田、森本は談話室のソファーを占領していた。 「空は実家帰んの?」 「いや、多分帰れない。部活あるし、インハイあるし……やっぱ絶対帰れんわ」 「去年も帰れてなかったもんなー。遠いのも大変だね」 だいたい飛行機で二時間程。 帰るとしたらすげーハードスケジュールになる。 「もっつぁんは帰んの?」 「もっつぁんは帰るよー。だって近いし暇だもん」 「自分で暇だって認めちゃったよ」 もっつぁんこと森本の家は黎学から一時間も掛からない場所にあるらしく、長期の休みの時は必ず帰っている。 「あ、でもインハイは応援行くー。2-Aみんな行くらしいから頑張ってよ」 そんな盛大なことになってたとは……去年黎学はベスト4だった。 俺はPGとして最初から最後までスタメンキープしてたんだけど、俺はどっちかと言うとSFかSGが良かったってのが本音。 一年なのに目立った活躍をしていた所為か雑誌の取材なんかも良く受けてた。 だからか今年は取材の件数がハンパなかった。 「空君今年の注目選手だからね、応援にも超気合い入るー」 そんな事を言いつつ森本は最近発売だったバスケ雑誌を広げ、俺のページを読み始める。 「読むなし」 「"今年は違うポジションですがどうですか?"」 インタビューをしているつもりなのか俺にマイクを向けるような仕草付きで問い掛けてきやがった。 「……………ばっちしはまってまーす」 勿論こんな答え方はしていない。 ただ雑誌に書いてあることを反復するのはやたら恥ずかしい訳で、俺は逃げるように飲んでいたコーラの缶を持って談話室を出た。 「……逃げたね」 「逃げたな」 だからこんな二人の会話なんか知る由もない。
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