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「うーッス」
いつも通り軽く挨拶をしながら体育館の中へと進む。
一度チラリと振り返って先輩は大丈夫か確認すると、やはり少し緊張気味な様子が伺えた。
「あ……そ、空先輩!こんにちは!」
「おー」
最近山本が良く俺の後ろを付いて来るようになった。
うん、なんか微笑ましい。
適当にパイプ椅子を組み立てボールがあまり飛んでいかない端っこの方へと置く。
「多分ここなら安全だから、どーぞ好きなだけ見学していってくださーい」
「あ…うん。ありがとう」
そう言って椅子へと座る彼女。
横で山本が俺と先輩を交互に見ていた。
「空先輩」
「ん?」
「先輩彼女さん居たんですね。僕知りませんでした」
「んな………ッ!?」
その言葉に俺は盛大に吹き出し、先輩は妙な声を挙げながら顔を赤くさせ口をパクパクとさせていた。
「ちょ、ちょ、ちょ…あなた……」
「山本──────お前、眼科行くか?」
「何よ!そのツッコミは!」
俺のツッコミは不服だったのか先輩は不貞腐れた表情を浮かべるし、山本に至っては何が悪いのか解ってないようで首を捻らせていた。
「彼女じゃないよ、今口説いてんの」
「なッ────ば、バカな事言わないでよ!」
「そ、そうなんですか!?」
「山本君も信じないで!」
顔を真っ赤にさせる二人を見ているのがすげー楽しくて自然と口が緩む。
気付かれないように片手の甲で口を隠しながら踵を返して背を向けた。
「山本、そろそろ集合ー」
「あ、はい!」
「じゃあ先輩。楽しんでってくださいよ」
顔だけで振り返って一言伝えてから山本と二人バラバラと集まり出す中へと向かう。
「先輩、本当の所どうなんですか?」
「え?あ────…どうなんだろね」
本当、どうなんだろう。
自分の事ながら全く解らない。
先輩と俺って何なんだろう。
─────同士
その言葉が一番しっくり当てはまるのかもしれない。
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