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「調子乗んなっつの」
その言葉と共に少し腰を屈め最初に西川に見せられたドライブと同じ位のスピードで脇を抜き去る。
「甘いッスよ!」
俺の脇をぴったりとマークする彼を見つつ無鉄砲にもレイアップシュートの態勢でゴールへ突っ込んだ。
壁として飛んだディフェンスは西川含め三人。
「八重沢!無理だ!」
新谷さんの声が響く中俺の口角はつり上がる。
「ナーイス、下田」
ナイスポジションと言ってもいいだろう。
まぐれか否か後ろから走って来た下田にレイアップでジャンプした態勢のまま、上に上げた手首を後ろに返しノールックパスでボールを繋げるとダンクで2点を返した。
「ナイスパス、八重」
そんな下田とハイタッチわ交わす。
新谷さんも西川もそこにいた人達はみんな驚きを隠せずにいるようだった。
下田のダンクから流れは一気に変わった。
動揺を隠せない西川の甘いパスをカットし、そのまま一気にゴールまで突っ込みレイアップで自ら決め同点。
相手Fのドリブルを下田がカットし俺に投げられたボールを3ポイントラインまでドリブルすると─────。
「これ以上は決めさせねぇ!」
火が点いたのであろう西川が俺の前に立ちふさがった。
ボールをついたままそんな西川にまた俺は鼻で笑う。
「甘いんだよ、西川」
「!」
それと同時に一歩足を踏み出すと西川もドリブルだとつられて前へ走り出す─────その瞬間を狙って体の後ろに右手を回し背後から左側へとボールを投げた。
「あ!」
ちょうどそこに山本が走り込んで来てボールを受け取り3ポイントラインからシュートを決める。
いつもながら本当きれいなフォーム。
「ナイシュ」
「ありがとうございます!」
軽くハイタッチを交わしまたポジションにつく。
そのまま試合は進み、10点差で俺らが勝利した。
「八重沢」
「!」
「去年とは別人だな」
新谷さんの言葉にふと笑みが漏れる。
「何も変わってないッスよ。負けたくない、それだけッス」
それだけ言うと新谷さんは小さく笑って俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
軽く乱れた髪を手で直しながら宮野先輩の方へと向かう。
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