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「お待たせ、八重沢くん」
「!」
今の時間は夜の7時
場所は駅近のオーソドックスな回転寿司屋前
待ち合わせの人物は─────
「遅すぎて腹減ったわー、朝倉先生」
「そりゃ失礼。遅くなった分たんと食え食え」
そう、美術の朝倉先生。
寮生会で顔合わせるようになってからやたらと仲良くなって、今度飯行こうって話になったのがきっかけで何だか寿司を奢ってくれるという事になった。
「そんじゃ入ります?暑いし」
「そうすな、立ち話もなんですし。どーぞ?八重沢様」
開かれた扉に一瞬目を丸めるもののその行動に小さく吹き出す。
先生らしい、本当。
「先生男前ー。どーもすんません」
軽く会釈しながら中へと入ると笑顔の店員に出迎えられる。
人差し指と中指を立てて二人だと示すと手近なテーブル席へと案内された。
「先生、禁煙すよ」
「わかってるっつの。帰りマックでも行こうじゃん」
「おー」
「王子は吸わんのかい?」
うん、実はボクも喫煙者。
朝倉先生にはバレてしまった、思いっきり。
「俺今日持ってきてない」
「禁煙?」
「いや、もとからイライラした時しか吸わないんすよ」
「じゃああの時はイライラしてたんだ?」
「………………。」
あの時──────それは肝試しの日。
イライラしないワケがない。
「最悪でしたよ、あの日は」
そう言った矢先俺の脇をネギトロ巻が通過するのが見え、話もそっちのけで皿を取ると先生は盛大にずっこけた。
「食うのかよ!」
「え?だって腹減ったんだもん。ネギトロ好きだししゃあない」
ネギトロは俺の一番好きなネタと言っても過言ではないね、うん。
「で、王子は最近どうなんよ?好きな人とか出来たワケ?」
「何すか、いきなり…」
教師にこういう話題振られると一瞬心臓が跳ねるんだな、と実感。
「いや……何だ、うん…気に、なった…みたいな?」
「俺みたいなガキの色恋話聞いておもろいの?」
そこ不思議だよね、絶対おもろいとは思えない。
「面白い面白くないより気になる。アンタ普段から底が見えないから」
「底ねぇ…」
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