8人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
基本的に俺は雑音、騒音が大嫌いだ。
勿論目覚ましの音も嫌い。
だから目覚ましなんて掛けたことがない。
それでも決められた時間に起きれる俺の執念と根性はすごいもんだと思う。
そんな俺は今日も3時30分起き。
「流石にしんど…」
昨日すんげー無理矢理寝たのが3時。
だから俺は30分しか寝てない訳で。
「今日こそは帰ったら爆睡だな…」
間違いない。
大欠伸をかましながら太めの濃紺のGパンに黒のロゴTシャツを着てジーンズ生地のメッシュ帽を被り、両手首に黒のナイキのリストバンドをはめ、バスケットボールを片手に持ち赤のハイカットスニーカーを履いて部屋を出る。
段々と明るくなってきてはいるものの当たり前のように廊下は閑散としていて誰一人いなかった。
これがいつも通り─────だったのに。
「空君?」
「!」
ちょうど談話室を過ぎ去った辺りで背後から聞き慣れた声が俺の名前を呼ぶ。
「宮野先輩」
今し方帰って来たのであろう彼女の姿にふと笑みが溢れた。
「朝帰りッスか?」
「まぁ…そんな所ね。空君こそこんな時間にどこへ行くのよ」
「まぁ…ちょっとね」
先輩が言葉を濁したように俺も言葉を濁すと不服気な顔が覗く。「眠くないなら来ます?間違いなくオールになるけど」
「い、行く!行くわ!」
そんな彼女の反応に吹き出しそうになるのを堪えながら青涼寮を出るといつも通り黒の車が停まっていた。
声を掛ける事も無く当たり前のように後部座席のドアを開く俺に、先輩は慌てたように俺の腕を掴む。
「ちょ、ちょっと空君!何やって…」
「何って…これ俺の兄貴の車だし」
「えぇ!?お、お兄様の!?」
兄貴の車だとわかると先程よりも慌てふためく様子が窺え思わず小さく吹き出してしまった。
最初のコメントを投稿しよう!