特訓

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「まぁ、取り敢えず乗ろ」 先に車へと乗り込み俺の隣を軽く叩くと少し戸惑いながらもそこへと座った。 「何やねん空、お前彼女出来たんか?」 「違うわ。たまたまそこで会ったんよ。眠れん言うから連れてきた」 「は、はじめまして。宮野李里です」 兄貴は生まれつきだからしょうがないんだけど鋭い目で先輩を一瞥すると案の定彼女はびくりと肩を震わせ身を後ろに身を引く。 そんな様子に俺は乾いた笑い声が漏れたが、奴は営業スマイルとでも言うのだろうか。 鋭い目をアーチ型に描かせ人の良さそうな笑みを浮かべた。 「はじめまして、八重沢海輝です」 そう、コイツが二番目の兄貴の海輝(ミキ)。 「ミッキーって呼んでな」 「……良い年こいてミッキーかよ」 「何か言うたか?」 「別にー」 ゆっくりと動き出す車を後目に先輩はキョロキョロと落ち着き無く辺りを見渡す。 「どしたん?」 「……どこに行くの?」 「あぁ、隣町のストリートバスケ場」 「お前、相変わらずの言葉足らずみたいやな。それ位言うてから誘えや。李里ちゃん驚いとるやん」 海輝兄の指摘は最もなもので反論も出来ずに明後日の方角を見つめた。 「コイツ毎朝一人で練習してたみたいでさ、最近俺も勤務地が東京になったから一緒にやっとるんよ」 「へぇ────…意外」 「何が?」 本当意外そうに俺の顔を見る彼女に自然と眉を潜める。
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