特訓

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先輩と兄貴で何やら盛り上がりを見せる中俺は段々と睡魔に襲われ、そのまま眠りに落ちた。 「空君…寝ちゃった」 「本当マイペースよな、この生意気なガキンチョは」 「本当────綺麗な顔ですよね、兄弟揃って」 そんな俺絡みの会話が繰り広げられているなんて知る由もない。 「────ら……ーい……」 「──────ん…」 「着いたっつの!クソガキ」 「!」 兄貴の罵声にも似た声に思い切り目が覚める。 「…………クソガキじゃねぇし」 「文句言う暇あったらさっさとアップしろや」 ゆっくりと車から降りるとベンチに腰を下ろす先輩が視界に広がった。 漸く昇りきった朝日に照らされて先輩の栗色の髪がキラキラと光っていて───── 「キレー…」 誰にも聞こえないような声音で呟くとタイミングよく此方を見る彼女。 思わず心臓が跳ねるも素知らぬ顔でアップを始める。 「今日も1on1?」 「で、ええやろ?お前まだ俺に勝ててへんし」 兄貴は何だかんだかなり強い。 今だって実業団のバスケチームのエースだし、高校生の時だって超有名なFだった。 兄貴の代でバスケやってる奴で兄貴の事を知らない奴は、殆どいないと言っても過言じゃないと思う。 「今日は勝てそうな気ィすんねん」 「それ毎回言うとるけどいつ実現するん?」 「…………………。」 そんなんこっちが聞きたいくらいだ。 俺が周りに底が見えないと言われているように、兄貴は本当に底が微塵も見えない。 普段人に本気を見せない俺が本気を見せたっていつも更に上を行かれる。 この人を追い越すことは不可能なんじゃないかと思わされてしまうかのように──────…。
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