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「ウシ、そんじゃ始めっか」
1on1と言ってもただの1on1じゃない。
俺が点を入れるまでひたすらオフェンスの1on1だ。
これがなかなか終わらず結構しんどい。
「そんじゃ、スタート!」
そんな兄貴の合図と共に激しい攻防戦が始まった。
兄貴と戦う時の俺は兎に角がむしゃら。
どんなに無理な態勢からでも突っ込みシュートを狙う。
でも兄貴のディフェンスはそう甘くない。
分かってるからこそタイミングをずらすように一度手を引いてフェイントを掛けてから上へ高く放り投げるシュートを放つ─────兄貴の手が届かないように。
「考えたな…でも甘っちょろいなー空」
「!」
兄貴はすぐさま両足で着地しもう一度高くジャンプ。
俺のシュートはいとも簡単にはたき落とされた。
「……ックソ」
落とされたボールを素早く拾い少し離れた位置からクイックで打つと漸くボールはゴールネットへと吸い込まれる。
シュートが決められた事の嬉しさは全く無い。
何よりも悔しさだけが全身を覆い尽くす。
俺はこの感情を何処にぶつけていいのかわからず、頭を冷やすかのように拳で地面を殴りつけた。
「空君………!」
「頭冷えたんか?」
「………次」
段々と集中力が増していくのがわかる。
兄貴は至極楽しそうに口角を吊り上げて笑ってからボールを持って位置に着いた。
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