8人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
立っていたのは4歳くらいの小さい男の子。
目には涙を一杯に溜めていて一瞬ギョッとした。
「ど、どうしたん?お前」
道の真ん中じゃあ通行の邪魔だとその子を端っこまで引っ張って行き、目線を合わせるようにしゃがんで問い掛ける。
「お…」
「お?」
「お、おねぇちゃ……いない…」
迷子か─────そう思うとまた溜め息が出そうになるけどボロボロと涙を零すこの男の子を見るとどうにもそんな訳にいかなかった。
「お前、名前何つーの?」
「あ、愛斗…」
「愛斗ね。一緒にお姉ちゃん捜してやっから泣くな」
零れる涙を指で拭ってやりながら頭をポンポンと撫でると愛斗は今まで泣いていたのが嘘のように笑顔になった。
ブーブーブー
「はい」
突如鳴り出した携帯。
持ってとばかりに愛斗に金魚を預けながら通話ボタンを押すと森本のキンキンした声が耳に響いた。
「空君!何やってんのー!?」
「あー、ハイハイ。俺ちょっと急用、三人で遊んでて」
「えぇ!?ちょ、どういうこと!?」
「文句はまた今度聞くから、じゃーね」
一方的に通話を終了させたと同時に背中に負荷が掛かる。
「おにぃちゃん、肩車ー肩車ー!」
「……ったく、しょーがねぇな」
仕方無しに愛斗を肩に乗せて立ち上がると愛斗は嬉しそうに目をキラキラと輝かせた。
そんな様子にふと笑みが溢れる。
「お姉ちゃんいたら教えろよ」
「うん!」
時折俺の頭を叩く愛斗の奇襲に合いながら適当にブラブラとその辺をほっつき歩いて幾分か経った頃─────。
「愛斗!」
「!」
「あ、おねぇちゃん!」
背後から聞こえた声にゆっくりと振り返るとそこには…。
最初のコメントを投稿しよう!