風鈴市

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その間にポケットから財布を取り出すと待てとばかりに手が翳される。 「私に払わせて?今日のお礼」 「別に何もしてないじゃん」 「いいから…ね?」 納得はいかなかったけどこのままじゃ埒があかないことも目に見えていたから渋々と了承した。 「じゃあ…お願いします」 「ありがとう」 そう言っておっさんに代金を払い綺麗に包まれた一つの箱が入った袋を俺に差し出す。 「─────ありがとう、空君」 頷く程度の会釈をしてからそれを受け取ると先輩は綺麗に微笑んだ。 「ねぇ、先輩」 「何?」 「今度どっかで会ったらアド教えてね、ナンパするから」 「えぇ?何それ、全然想像出来ない────楽しみにしてる」 そんな冗談を交わした後バイバイしたくないと駄々をこねる愛斗と優斗に今度遊園地に連れて行くと約束をして何とか離れてくれた。 「ごめんね」 「いいッスよ、別に。じゃあ、俺明日早いから」 「あ、うん。また海輝さんと練習?」 「いや、遠征。明後日から夏大だから」 まさかそんな返しがくると思ってなかったのか先輩は目を丸くした。 「先輩も俺に会いたかったら応援来てね」 「んな……ッ!?」 「うそ。割とみんな応援来てくれるみたいだからさ、先輩も時間あったら来てよ」 僅かに頬を赤らめた先輩が不貞腐れたような顔をしながら一つ首を縦に振る。 「じゃあ、おやすみ。宮野先輩」 「おやすみなさい」 「じゃね、愛斗に優斗」 「バイバーイ!」 「またね!おにぃちゃん」 明後日から夏大。 去年こてんぱんにやられた奴らに 絶対勝ってやる──────。
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