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「今年は八重沢君にも後輩が出来た訳だけど、環境が変わった面ではどうなのかなー?先輩しかいなかった時と比べて心境の変化はあった?」
「心境の変化は凄くありますね。去年は先輩達の背中が凄く大きく見えてたし、ついて行こうと追い掛けてましたけど今年は自分が追い掛けて貰う番だと思ってます」
「大人になった訳だね?」
「そうですねー。去年は監督からルーキーと言われていたのが今年からエースに変わりましたし、もう誰にも負けないッスよ」
<もう負けない
今年こそは全国制覇>
これが今年の黎学のスローガンのようになっていて、全員が口癖のように繰り返していた。
「そう……応援してるからね!頑張って」
「ありがとうございます」
そこで漸く取材は終わりみんなを追い掛けようと気怠げに立ち上がった先に見えたのは森本、吉田、七瀬先輩、奥山先輩に井野先輩、それから宮野先輩。
「よぅ空!お前モテモテじゃねぇかよ~羨ましい奴め」
奥山先輩に肘で小突かれるも何の事だけさっぱりわからない。
「何が?」
「今の人可愛かったなー、誰誰?」
嬉々と騒ぐ吉田と奥山先輩に小さく溜め息が漏れた。
「八重沢君、一つだけ質問いいかな?」
「!」次に声を掛けて来たのはさっきのお姉さんと一緒に群がって来ていた落ち着いた感じのおっさん。
「今年八重沢君が注目してる高校……所謂ライバル校はどこかな?」
「ないッス」
即答で答えると記者達は呆気に取られたように呆け、森本達に至っては大絶叫という何とも素晴らしいリアクションを取ってくれた。
うん、うるさいけど。
「な、ないのかい?」
「ないッスよ、だってうちが一番強いですから」
記者のおっさんは待ってましたと言わんばかりに可笑しそうに笑った。
「去年より随分逞しくなって帰ってきたみたいだね、八重沢君」
「王者鳳凰だか何だか知らないけど、今年は去年の準決の借り返しますよ────って黎学の八重沢が言ってたって伝えてもらえません?鳳凰に志木さん中心に」
「そう言えば志木君は随分君の事意識しているみたいだったよ」
「へぇー…」
「伝えておくよ、ありがとうな。八重沢君」
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