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夏大2日目───────
今日俺ら黎学の緒戦が行われる。
緒戦の相手は月城高校、夏大常連校だ。
常連校だからこそ何度も対戦した事はある、そんでもって…
「八重沢、お前温存」
「…………………。」
やっぱりか。
「まぁ、多分途中出る事にはなるかもしれないが……なるべくなら引っ込めておきたい」
俺は出たいっつの。
そんな訳で俺の代わりに抜擢されたのが山本。
俺は上下長ジャージを羽織ったまま控え室を後にしコートへと向かった。
コートに入ると館内からは物凄い大声援。
その後軽いアップが始まると突如としてざわめきに変わる。
俺が完全サポートに回ってるせいだろうか。
「空先輩…俺────…」
コートに入って直ぐ山本は不安げに俺の所へとやって来た。
持っていたボールを左手人差し指でくるくると回しながら山本の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「大丈夫、お前が一人で不安になるなっつーの。お前の後ろにはみんな付いてんだから…思い切り楽しんでこいよ」
そう言うと山本は何か吹っ切れたように満面の笑顔を浮かべてコクリと頷いた。
犬みたいな奴だな。
「黎学集合!」
監督の掛け声に倣ってバラバラとベンチへ集まり出す。
「八重沢!」
「!」
そんな中俺は月城のエース田上さんに声を掛けられ足を止めた。
「今日は出ないのか?」
「わかんないッス。田上さん次第じゃないッスか?」
「相変わらずの生意気さ加減だな」
可笑しそうに笑う田上さん。
俺の後ろから監督が怒鳴っているけど片手をひらりと振って流すと諦めたように声が止んだ。
「今年はポジション一緒になったから対戦出来んの楽しみにしてたんだけどな……まぁ、引っ張り出してやるよ」
片手を差し出され俺も同じように片手を差し出してその手を握った。
「お手柔らかにー」
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