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それから程なくして試合は始まった。
うちのジャンプボールは新谷さん。
やはり負ける事無く黎明ボールから始まり、西川にボールが渡る。
西川の得意とするパターンはラン&ガン。
すばしっこい彼にはピッタリだが、今回のメンバーじゃ考えもんだった。
山本じゃ多分ついて行けない。
さぁ、奴はどうするのか─────それも見物だった。
「八重沢、お前はどう見る?」
隣に座る監督の問いに俺は試合を見続けたまま口を開く。
「現状で言うなら……西川のボール回しがカギじゃないッスか?」
「そうだ。お前を温存とは言ったが厳しいだろう…体冷やすなよ」
田上さんだけで見ても彼は間違いなく五指に入るSGだ。
山本がいくら成長したと言えど厳しいだろう。
着々と試合は進んでいきもう全行程の2/3弱が終わった頃────
「八重沢、山本と交代だ」
「………交代遅過ぎないッスか?」
この時間で点数差は10点。
勿論うちが負けている訳で。
「お前ならいけるだろ」
この信頼性はなんだろう。
不思議に思いながら上着を脱ぎコートサイドに立つ。
物凄い歓声と少量のブーイングを受け最早俺は溜め息しか出ない。
小走りでやって来た山本と軽くハイタッチを交わすと彼は不甲斐なさからか、徐に肩を竦めた。
「すみません…僕…」
「田上さん相手に10点差はすげーよ。後は任せろって」
そう言ってコートに入ると焦ったような素振りで西川が俺の元へとやって来る。
「空先輩!どうしたら…」
「勝てっから落ち着け、ばーか」
軽く頭を叩くと漸く彼は落ち着きを取り戻してきたのか小さく息を吐いた。
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