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「お前はいつも通りやりゃいいから…ボールくれ」
「!…了解!」
西川とも軽くハイタッチを交わしてからポジションへ着くと、待ってましたとばかりに田上さんが出迎えてくれた。
「漸くお出ましだな、スーパースター」
「何スか…それ」
田上さんは流れる汗を片手にした白いリストバンドで拭いながら高揚感で満ち溢れた笑みを浮かべる。
「この声援が物語ってるだろ?味方や一般の観客からの大声援、それから敵チームからのブーイング……本当、倒し甲斐のある奴だよ」
この人も俺と一緒だったのかもしれない。
俺が志木さんに抱いていた感情をこの人は俺に向けていた。
「バスケってさ、技術だけが全てじゃないと思うんスよ」
「!」
「空先輩!」
西川から放られたボールを両手で受け取る。
「勝利への貪欲さや執念────それが一番だと思う」
肩慣らしとばかりに全力とは程遠いドライブで田上さんの脇をすり抜けた。
山本から俺へと変わったばかりだからスピードに差がある為か簡単に抜けた事に若干驚いたが、ゴール前でFとC計三人がブロックで飛ぶ。
ここは意地でも俺が決めなきゃいけない─────それは解っていた。
だから無理矢理突っ込んで跳び少し体を縮こまらせながら敵三人のうち二人の間に割って入り、高めにボールを放り投げる。
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