夏大2日目

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「リバン!」 「入る訳ねぇ!」 「落ちねぇし」 俺の宣言通り高く上がったボールはリングの中へと吸い込まれるかのように入った。 「焦んなよ、西川」 「!」 「優勝すんだろ?緒戦敗退なんかさせねぇよ」 そこで漸くいつも通りの西川に戻る。 生意気で目を輝かせながらプレーする西川に─────…。 彼が元に戻ったことにより、黎学はプレーの幅が広がる。 新谷さんのダンクを始め次々と点を重ねていった。 ピ───────! 「終了…」 結果は94-82。 俺ら黎明の大逆転勝利で幕を引いた。 「負けたわ、八重沢」 「!」 再度握手を求めるように片手を差し出す田上さん。 「ありがとうございました」 「優勝しろよな、バカヤロウ」 負け惜しみのように悪態を吐いてから控え室へと戻っていく彼の背を見ながら小さく息を吐く。 彼はもしかしたらここで終わりかもしれない、とそんな事を思ってしまった。 選抜の時期は受験の為参加しない三年生も多くいる。 「……ありがとう、ございました…」 小さくなる背中に再度御礼を言って頭を下げると彼は片手を上げてひらりと振った。 彼らの思いを背中に背負いながら俺らは次の対戦へと進む。 「よくやった」 「…………はい」 知り合いが増えれば増える程感傷に浸りやすくなる俺はまだまだ弱いのかもしれない。 けど 「優勝するんじゃなかったのか?八重沢。こんな所で立ち止まるのか?」 「……まさか。俺らが優勝ッスよ」 勝ちへの執念と欲深さだけは今も尚保ち続けているんだ─────…。
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