夏大3日目

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響き渡る黄色い声のお陰で周りにバッチリ俺の存在はバレてしまった。 「八重沢君!?」 「わぁ、かわいい!」 最早試合なんかそっちのけで俺を遠めから見ている人、近くへと群がって声を掛けて来る人、そんな人ばかりで俺の周りは埋め尽くされていた。 ヤバいな… そう思った最中鳳凰のベンチに入り切らなかった観客席にいる控え組に俺の存在がバレてしまった。 「八重沢!?」 「八重沢空だ!」 「アイツ何でこんな所に!?」 これだけ騒げばコート内の選手の耳にもだいたいの事は届く訳で。 「八重沢…」 志木さんとバッチリ目が合ってしまった。 「志木さん…」 暫くお互い目を逸らさずに居ると彼は自信に満ち足りたような笑みを浮かべた後、右手の人差し指でコート上を指差す。 此処まで来いと言うことだろう…そんな挑発に俺は仕返しとばかりに彼に向けて舌を出してから観客席を後にする。 本当あの人は… そんな事を思うと先程まで嫉妬していた自分が馬鹿らしくなってくる。 喉の遅れで小さく笑ってから俺は控え室へと戻った。 「あ!八重!」 「戻ってきた!」 チームメイトが口々に安堵の声を漏らす中監督が俺の前へとやって来る。 「八重沢…」「…………………。」 「次の試合出ろ」 思わぬ作戦替えに俺は目を丸めた。 「確かにお前の言う通りだった。俺はお前を最高の選手だと思ってる…だからこそお前の芽を潰したくないと過保護になり過ぎていたのかもしれない」 「…………………。」 「暴れて来い。思う存分」 そう言って俺の肩をポンと叩く監督に思わず吹き出してしまった。 「…………お前、そこ笑う所じゃねぇだろ」
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