夏大3日目

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そうかもしれない、そうかもしれないけど笑いが込み上げて来てしまったんだからしようがない。 「だって過保護ってさー…監督俺の事どんだけ好きなの?」 「おまっ…!本当プレーから何から可愛くねぇ奴だな」 わしゃわしゃと俺の髪をかき乱す監督から素早く逃れる。 「絶対優勝しましょ、監督」 「当たり前だろ」 メンバー全員で円陣を組んでから控え室からコートへと向かった。 また緒戦同様の物凄い歓声が飛び交う。 そんな声援を背に感じながらコートへと足を踏み込ませた、その時────。 「空ッ─────!」 「!」 普通なら聞こえない…でも何故か耳に聞き慣れた声が届いて俺は黎学の横断幕がぶら下がる観客席へと振り返ると、身を乗り出すかのようにして宮野先輩が俺に何か伝えようとしていた。 何となくわかる。 彼女が俺に何を伝えたいのか──────だから俺は彼女に向かって右手を額に持っていき軽く敬礼してみせた。 すると彼女は緩く微笑んでから同じように敬礼のポーズを取る。 そんなやり取りの後、コート中央へと向かえば軽い挨拶をしてから直ぐ試合は始まった。 緒戦よりも余裕を持って試合を進められたと思う。 西川も全く焦る様子も無く実力を発揮し、俺も42得点18アシストとまぁまぁの成績で勝利した。 「よくやったな」 「うーッス」 「八重沢空!」 「!」 直ぐ真上の観客席から俺の名を呼ぶ声にゆっくり顔を上げる。 「………だれ?」 「てめ…ッ!俺だよ、俺!九州の小学校で同じミニバスだった安堂猛!!」 「安堂……あぁ」 そこにいたのは小学校の時の同級生で同じミニバスでポジション争いをしていた───── 「負け犬安堂か」 「何故それを覚えている…!?」 覚えてて欲しいんだか忘れてて欲しいんだかよくわかんない奴。 「何か用?」 「次のお前の相手はうちの学校だぞ!吠え面かかせてやっからな!待ってろよ!!」 言い逃げのようにそれだけ言い残して立ち去るアイツ。 「………何だったんだ?」 取り敢えず… 「次も楽しみ、ってやつか」
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