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「ねぇ、曽良くん」
「…はぁ。何ですか」
「Σぇ、ちょっと何でそんな、あからさまなため息!?芭蕉ショック!!」
どうしてあの時、真面目に話を聴いてやらなかったのだろう。
何時ものように、話しかけてきたあんたにわざとあからさまな溜め息を吐いた僕に、何時ものように馬鹿なことを言っていじけるあんた。
それが僕達の日常。
「ウザいですよ芭蕉さん。話がないなら先に行きますけど」
「あぁ!?ちょっと待って!!ごめん!ごめんなさい!すみません!私が悪かったから話聞いて!お願いします!」
泣きながら先に行こうとした僕を、必死で止めるあんたを内心面白く思いながらも顔には出さず、あんたに顔を向ける。
仕方ないと言った表情で、何ですかともう一度聞いてやるとあんたは嬉しそうに微笑んだ。
どうして気付かなかったのだろう。
あの時浮かべたあんたの笑顔は、どこか悲しげで寂しさを漂わせた笑顔であったことに。
失って、初めて気付いた。
あんたがどんなに大切だったのか。
あんたがあの時浮かべた笑顔がどんなものだったのか。
あの時言った言葉の本当の意味も…。
「曽良くん…もし、私が居なくなったらどうする?」
どうして何時もの戯れ言だなんて思ってしまったのだろう。
あんたはあんなにも…寂しそうに微笑んでいたというのに。
失って初めて分かりました。
僕はあんたが居ないと…生きる気力すら持てないみたいです。
―終―
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