大好き!

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「狐雪ぃぃいいっ!!!!」 「うぁ、来たっ!」 ダダダダッ!!と騒がしい声と音を響かせ走る少年に気付いた少女は、ヤバッと言わんばかりに焦った表情を浮かべ咄嗟に近くの部屋に隠れた。 彼女の名前は狐雪。 九尾の狐の香夜と、雪兎族の翔との間に生まれた子で、見目は父親に似たらしい彼女は、五歳にしてかなりの美少女だ。 そして、今まさに彼女の名前を有らん限りの声を張り上げ探し回っているのが双子の兄の蛍兎である。 彼は見た目は母に似たらしいが、五歳にしてどこか父に似た女性を惹き付ける何かを持つ、眼鏡をかけ知的な印象を与える此方も美少年であった。 「狐雪ぃぃいいっ!!どこだぁああっ!!今日と言う今日は、もう許さん!!」 「わぁ…結構、怒ってるなぁ…。お兄ちゃんったら見た目は知的でクールなのに、ほんと性格は真逆だよねぇ」 怒鳴る兄の声に、息を潜め隠れながら小さく零して笑う。 知的な様で、猪突猛進で短気な所がある蛍兎だが普段は見た目に見合うだけの穏やかさを表に出しているので、此処まで怒るのも何か無ければ有り得ない事であったりする。 「寝てる隙にちょっと金縛りにかけて、女装させて縄で拘束しといただけなのに…」 「狐雪ぃぃいいっ!!」 何故そんなに怒るのか、狐雪は心底分からないといった様子で首を傾げる。 だが、それだけの事をすれば妹溺愛な兄の蛍兎でも流石に怒るのは当たり前だろう。
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