妖刀

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「父様。私だって将来は藤屋を継ぐ者です。今から勉強していないと慧(けい)にバカにされてしまいます」 大柄な男はたくましく笑いながら少年の頭を乱暴に撫でた。鋭い目付きは二人共そっくりだ。 「頼もしいな。だがな千雪、そろそろ剣の稽古の時間じゃないか?」 大柄な男はニヤリと笑って時計を指差した。少年は慌てて竹刀を抱えると走り出した。 「あら!」 「あぁ!坊っちゃん、危ないですよ」 少年が走り出し忙しく動いている者逹は慌てて少年を避けたのだ。 「すまない!では行ってきます」 少年は大きな声で謝りながら店を飛び出した。 大柄な男は困ったようにため息をつくと礼儀正しい初老が小さく笑った。 「旦那様そっくりではないですか。顔は奥様に似て可愛らしいですが」 「ほっとけ」 大柄な男は気まずそうに頭をかいた。
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