遠くもなく、近くもなく

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「今頃他の女と遊んでるよ。あんたみたいな子供ひっかけるなんて珍しいけど、家出か何か?」 女は答えなかった。 もともと興味があって聞いたわけじゃないのでべつに気にしないけれど。 「昼前には帰ってくると思うけど。帰るとこあるならそれまでに出て行ったほうが良いよ」 わざわざ他の女というところを見てショックを受ける必要もないだろう。俺の知ったことじゃないけど。 「…健吾はそんな人じゃないよ。あたしに優しくしてくれたもん」 時々いるのだ。こういうやつが。 ため息をはいて扉から離れる。 「俺は忠告したから」 返事はなかった。 月明かりを見上げていた姿を思い出す。 綺麗な肌だと思った。 性格はあまり好みではないけど。 どうせ明日になったらいなくなってるさ。 今までもずっとそうだった。 きっと、これからも。 四郎はそういう付き合いしかしない男だった。
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