1人が本棚に入れています
本棚に追加
四郎の部屋には小さな窓が一つある。
天井に近い位置に一つだけ。
朝も昼も夜も、日はほとんど入ってこなかった。
けど、その天窓が気に入ってるんだと四郎は言う。
「布団のとこから見上げるとさ、ちょうど月が見えんの」
そう言って、笑った。
タバコをくわえたまま、右の口の端だけをあげて器用に笑った。
けど、四郎が夜にこの部屋にいることはめったになかった。
たいていは出かけていて、俺は眠れなくなると四郎の部屋に来て月を眺めていた。
だからあの日も、そうするつもりで部屋に来たのだ。
最初のコメントを投稿しよう!