遠くもなく、近くもなく

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俺が四郎に拾われたのは俺がまだ小学生の頃だった。 両親が死んで、親戚にも捨てられた。 公園で寝ていたら、酔っ払った四郎がふらふらと近づいてきて言ったのだ。「そんなとこで寝るくらいなら俺のとこ来いよ」と。 公園で過ごし始めて、3日目の夜だった。 あのときの俺はついていたと思う。 夏とはいえ夜はまだ冷えたし、お金もなかったから水しか口にしていなかった。 四郎がいなかったら俺はとっくに死んでいて、今みたいに学校になど行けていない。 俺みたいに拾われた奴らは多かったけど、数週間もしたらどいつも姿を消した。 帰る家のない俺だけが四郎の下に残った。
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