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窓の外は桜が散っている。
今日から新学期。
クラス替えもあって、教室の中はソワソワした様子でざわついてる。
『5年1組 清田はる』
と書かれた机のシールに目をやり、少し大人になったような気持ちでハルの胸は小さな鼓動をたてた。
ガラッ!!
教室のドアが開き、
担任がゆっくりと教壇に立った。
『今日から5年生だぞー。上級生だー。みんなで仲良くしろよー。』
一気に教室中がさわがしくなった。
梶木先生。
26歳で“どくしん”らしい。ママがこの前話していたのを聞いた。
梶木先生は力一杯遊んでくれるから、男子にも女子にも人気がある。
みんな喜んだ様子で、笑顔やおしゃべりが最高潮に達した時。
『おーい。入れー、ひいらぎー。』
教室が静まり返る。
先生がドアの方に目をやると、
ブカブカのトレーナーにダブダブのジーンズを履き、ランドセル代わりに大きなスポーツバックを斜め掛けした少年が、とぼとぼと入って来た。
『今日からみんなと一緒に5年1組の仲間になる、柊りょうだ。よろしくなー。』
先生が少年の頭をなでると、それを振り払うかのように、少年は小さくお辞儀をした。
彼はその日1日、一言も言葉を発する事はなかった。
ハルとリョウ。
10歳の春。
たった10歳。
桜の散る季節に、
2人は出会った。
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