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始業式が終わり、
中良しのユリと、ユリの幼馴染みのケンタと3人でいつもの帰り道を歩いていた時。
ユリがポツリと言った。
『今日来た転校生。柊くん。おひさまの家に住んでるんだって。昨日ママが言ってた。』
ハルは聞き返した。
『おひさまの家?』
『…。うん。おひさまの家。隣町にある“じどうようごしせつ”っていうところ。』
ハルはもう一度聞き返した。
『“じどう…ようご…”って何?』
ユリは小さな声で
『お母さんやお父さんがいない子どもが住んでるおうちだって。捨てられたり、殴られたりした子どもがいるんだって。』
ハルは小さく相槌をうち、ユリの手をギュッとにぎり、とぼとぼと歩いた。
3人は、そのまま何を話すでもなく、手を繋いで家路に着いた。
夕飯時。
今日はママの手作りハンバーグ。
ハルはいつもなら、キッチンの周りをうろちょろし母につまみ食いをせがむはずが、
今日は少し違った。
『ハルちゃん。ごはんよ。パパとお姉ちゃんを呼んで来て。』
と言うママの声に、
ボーッとテレビを眺めていたハルは、ふと我に返った。
ハルの声かけに、父と姉がリビングの椅子に腰掛けた。
『いただきまーす。』
4人の重なる声。
みんなが一斉に話し出す。
ママは今日お買い物に行って、かわいいワンピースを買ったのとパパに嬉しそうに話してる。
お姉ちゃんは好きなアイドルが出るドラマが始まると、ウキウキして話してる。
パパはそんな2人を笑顔で見つめながら、ママのハンバーグはぴかいちだとママを褒めていた。
ハルは、
泣いていた。
お皿にのったハンバーグが見えないほどに、涙はあふれてくる。
まぶたに収まりきらず、ポロポロと零れ落ちる涙。
ハルは、何の涙かわからなかった。
どうしてこんなに悲しいのか、どうしてこんなに涙があふれるのか。
ただただ分からずに、涙だけが零れていた。
『ハルちゃん?どうしたの?』
ママの声に、
『ハル?お腹痛いか?』
パパの声に。
『ハルちゃーん。』
姉の涙声に、
ハルは次第に嗚咽のような鳴き声になる自分を、コントロールできなくなっていた。
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