第一話

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「いってぇ…」 「だからさっきから何度も謝ってるでしょう?」 俺はお嬢様を起こしてるだけなのに…毎日毎日こうして傷が増える。 謝られても全然謝られてる気がしない… 「レディの部屋に勝手に入ってくるなんて失礼ですわ!!」 ノックしましたー、なんて言葉は呑み込んで、俺はにこやかにティーカップを差し出した。 「申し訳ございません」 「………」 お嬢様はこれに弱い。 こいつとは子供の時から一緒なんだ、どこが弱点なのかはすぐに分かるさ。 「…伸吾…」 「はい?」 軽く俯き顔で俺の名前を呼ぶお嬢様。 可愛く思ったなんて絶対ないない。 「普通にして?」 俺は笑顔を消すと同時に小さく息を吐いた。 敬語なんて苦手だ。 「ったく、お前はいつまでたっても自立しねーなー。朝くらい自分で起きろよ」 お茶を注ぎ、きりねの前に置く。 「うるさいわね、仕方ないでしょ?朝弱いんだから…」 きりねはそう言うとパンを一口かじった。 「それに、私を起こすのも執事である貴方の仕事よ?」 ふふんと偉そうに言うきりねを見て俺は (いや、さっき勝手に部屋入るな的な事言われましたけど!?) と心の中でツッコんだ。
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