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「ふふふふん、ふふふふん、ふふふふん、ふ、ふんふふん」
瓦礫の街を一人の少年が歩く、町には少年以外に生き物の気配は無く、時々転がる小石と少年以外には動くものも無かった。
「ふふふふん、ふふふふん、ふふふふん」
少年は楽しげに鼻歌を歌いながら歩く。今にも歌いだしそうなぐらい楽しげなリズムだったが、その顔は深い悲しみに彩られていた。
ふと、少年が立ち止まり、崩れ去ったビルを見上げる。そこはつい一月程前まで友達と遊び、新たな門出を祝ったショッピングモールだった。
ただし、今そこにあるのは瓦礫の山と、思い出だけだ。
(座る場所だけは増えたよな)
そんな余計な事を考えながらそこら辺の瓦礫を見つくろい、腰を降ろす。
見上げれば見える星空は、狂おしい程に美しかった。
「ふーふふふふーーふふふーーふふふふふふふーふふふーー」
少年はただ、寂しげな顔で、どこにも届かない鼻歌を歌い続けた。
今にも泣きそうな顔で、だけど決して涙は流さず。
ふと、歌が止まる。
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