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王
「………何言ってるんだよ…」
春樹は声の主の言葉の意味がまるで理解できなかった。
「てめえ俺と話してんじゃねえか!ぶつくさ言わずにさっさと出てきやがれ!!」
「…同じ事を言わせないでくれ…私にはもう身体が無いのだ…」
「……だからよ…身体が無いって事がわからねえよ!だったら何か?てめえは幽霊か何かか??」
「…幽霊とは何だ?…私は身体を失い、後は消えるだけの存在でしかない。」
「…消える?…死ぬって事か?」
「…死ぬのでは無い。私は役目を終えたから消える…それだけの事だ。」
「…だからそれが死ぬって事じゃ…」
「…死んだら転生する。私は消えるのだから転生はしない。だから死ぬのではない。」
「……もういいや。何はともあれ早く俺を帰らせてくれ。俺は明日もやる事沢山なんだ。とにかく家に帰らせてくれ。今回の事は夢だ。リアルな夢なんだ。忘れてやるから早くしてくれ!!!!」
春樹はもうどうでも良い感じで文句を言う。ようするに夢なんだと思いたいのだ。早く自分の知っている日常に戻りたいのだ。
「…帰る、というのはお前のいた世界に戻せ、という事か?」
「…そうだよ。早く夢から覚めたいんだよ俺は!」
「残念ながらそれは出来ない。そしてこれは夢ではない。」
「いい加減に……!」
「お前は王なのだ。」
「………はぁ???」
「お前は私の次の王だ。私は自分の役目を終えた。」
「……王?…王って…王様の事か???」
「…王は王だ。この国を導き、民の為の政を行う。それが王だ。」
「……意味わかんねえ…」
春樹は想像以上の展開に目を丸くする。なんて夢だ、と我ながら呆れ返る。
春樹は昔から夢とは自分の望む事か、絶対に起きて欲しくない事を見る物だ、と思っている。
そんな春樹に声の主はお前は王だと言う。
「…小説と映画の見すぎだな…」
「…もう一度言う。お前は王だ。私は役目を終えた。後はお前に私の「記憶」を渡すだけだ。」
「…記憶…??」
「…時間が無い。ではさらばだ…願わくばお前が…」
「おい!ちょっと待て!!」
「……輪廻の王である様に。」
そう言い残すと、声は消えた。
しんとした部屋には春樹だけが残され…
そして…
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