1/1
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

「………何言ってるんだよ…」 春樹は声の主の言葉の意味がまるで理解できなかった。 「てめえ俺と話してんじゃねえか!ぶつくさ言わずにさっさと出てきやがれ!!」 「…同じ事を言わせないでくれ…私にはもう身体が無いのだ…」 「……だからよ…身体が無いって事がわからねえよ!だったら何か?てめえは幽霊か何かか??」 「…幽霊とは何だ?…私は身体を失い、後は消えるだけの存在でしかない。」 「…消える?…死ぬって事か?」 「…死ぬのでは無い。私は役目を終えたから消える…それだけの事だ。」 「…だからそれが死ぬって事じゃ…」 「…死んだら転生する。私は消えるのだから転生はしない。だから死ぬのではない。」 「……もういいや。何はともあれ早く俺を帰らせてくれ。俺は明日もやる事沢山なんだ。とにかく家に帰らせてくれ。今回の事は夢だ。リアルな夢なんだ。忘れてやるから早くしてくれ!!!!」 春樹はもうどうでも良い感じで文句を言う。ようするに夢なんだと思いたいのだ。早く自分の知っている日常に戻りたいのだ。 「…帰る、というのはお前のいた世界に戻せ、という事か?」 「…そうだよ。早く夢から覚めたいんだよ俺は!」 「残念ながらそれは出来ない。そしてこれは夢ではない。」 「いい加減に……!」 「お前は王なのだ。」 「………はぁ???」 「お前は私の次の王だ。私は自分の役目を終えた。」 「……王?…王って…王様の事か???」 「…王は王だ。この国を導き、民の為の政を行う。それが王だ。」 「……意味わかんねえ…」 春樹は想像以上の展開に目を丸くする。なんて夢だ、と我ながら呆れ返る。 春樹は昔から夢とは自分の望む事か、絶対に起きて欲しくない事を見る物だ、と思っている。 そんな春樹に声の主はお前は王だと言う。 「…小説と映画の見すぎだな…」 「…もう一度言う。お前は王だ。私は役目を終えた。後はお前に私の「記憶」を渡すだけだ。」 「…記憶…??」 「…時間が無い。ではさらばだ…願わくばお前が…」 「おい!ちょっと待て!!」 「……輪廻の王である様に。」 そう言い残すと、声は消えた。 しんとした部屋には春樹だけが残され… そして…
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!