運命のドア

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運命のドア

声の主は消えた。 一瞬まばゆい光が春樹を包み、主はその存在を消した。 「…何だったんだ…?」 春樹は眩んだ目を擦り、改めて周囲を見渡す。 「……おい!!」 春樹は主を探したが、先程まで感じ取れた存在感がまるで無くなっている事にようやく気付いた。 「…消えやがった…ホントに消えちまいやがった…」 春樹はポツンと部屋に佇む。 「何なんだ…何なんだよ!!」 春樹は途方に暮れる…無理もない話だ。突然線路に突き飛ばされ、見た事もない世界に連れて来られた。 更に春樹は王だという。当然ただの学生に理解など出来るはずもない。 「…帰りてえ……マジに夢なら早く覚めてくれよ…」 しかし、春樹は気付いてしまっていた。 これは夢なんかではない事。更に自分は死んでもいない事…。 結局これは紛れも無く現実なんだ、という事を…。 「…はあ…」 溜息を漏らしながら立ち上がり宛もなく歩く。 その時、春樹の前の壁にうっすらと光が射した。 まるで春樹に「ここが出口だ」と伝えんばかりに…。 春樹は光の射す壁に恐る恐る手を触れると、壁は静かに消えた。 その先に通路の様な物が続いている。 「……行くしか…ねえか」 春樹は渋々と通路を進む。 距離にして15、6Mも進んだだろうか。 どうやら通路の出口らしき物が見えた。 春樹は小走りに出口に駆け寄り、ドアの様な物を見つめる。 「…何か書いてあるな…」 春樹はドアに刻まれた文を読んでみた。 この先に進む者よ そなたは王である 民の為に 国の為に その為にそなたは存在する 王は永遠なり 善政を行えば王は永遠なり 王は消える者なり 国を脅かせば王は消える者なり 王は神なり 王はその知恵と勇気を持って世界を造る神なり 王は悪魔なり 王はその欲望と堕落を持って世界を滅ぼす悪魔なり 王は運命なり 王は生まれ落ちた時より王なり 王は宿命なり 王はどんなに苦悩しても王なり 王よ この国に 光と平和がもたらされん事を… 「…進む者って…俺だよな…」 …春樹は迷った挙げ句ドアを開けた…
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