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時間が止まったような気がした
ただ俺の心臓が波をうつ音だけがとても聞こえて
だけど、周りの音はなに1つ聞こえなくて――
まるでこの世界に、俺とキミしかいなくなったような気がした
「え、今なんて――」
『そのままの意味だよ』
そう言って俺は、美優ちゃんから視線を逸らした
自分でも告白したことが信じられなかった
それと同時に恥ずかしさも増してったんだ
お互い何も話さず、だけどお互い何もせず時間ばかりが過ぎてゆく
2分くらいしたころだろうか
キミの口がゆっくり開いたんだ――
「あたしから、彼を忘れさせて……」
その言葉は、あまりにも背負うものが大きすぎて
だけどこの時の俺には、それの大きさが全くわかっていなかったんだ
『絶対、忘れさせてやる――』
「じゃあキスして」
あまりに突然だったので正直驚いた
でもキミの瞳には涙がいっぱいで、今断ったら壊れてしまいそうだった
キミの瞳の奥にあるたくさんの傷を埋めることができるのなら――
俺はキミの唇にゆっくり近づいた
キミとの初めてのキスは切なさと冷たさが入り混じっていた気がする
温度とかそんなのではない
きっとキミの気持ちの持ちようだったのかな
絶対そうだよ
こんなにも俺は、キミが好きなのにね
――美優
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