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不機嫌なわたしの横で、いつもにこにこと笑っているあの人が好きです。
交差点の人混みで、何も気にせず愛してるよと言ってしまうあの人が好きです。
キスが下手で、わたしの下唇に何度も何度も口内炎をつくってしまったあの人が好きです。
窒息しそうなわたしにお構いなく、笑顔でぎゅっとわたしを抱きしめるあの人が好きです。
寂しいと大声で言えるあの人が好きです。
無神経で、こっちの気持ちなんか知らなくて、「これ以上太ると嫌いになるよ」なんて言ってしまうあの人が好きです。
(でも、わたしが「嫌いになるよ」と言うと、あの人は途端に世界が終わったみたいにしょんぼりしてしまいます。)
いまだにわたしの口内炎の理由に気付いていないあの人が好きです。
わたしの気持ちには酷く鈍い癖に、ばかばかしい純愛映画なんかで目を潤ませるあの人が好きです。
時々無言で流れるわたしの涙の理由には、絶対に気付かないあの人が好きです。
(何もわからないのにあの人は、黙ってわたしの頭を撫でてくれます。)
ねえ、わたし。
あなたを好きでも良いんですか。
あなたのそばにいると、わたし時々、とっても胸が痛いのです。
あなたが好きだよと言って、わたしを抱きしめるたび、
あなたのそばにいるべきはわたしではないのだと
そう言われてる気がしてたまらないのです。
でもわたし、もうあなたから離れられません。
いつの間にか、わたしはすっかりあなたなしでは生きていけなくされていました。
ずっと、ひとりぼっちだと思ってたのに。
ねえお願い。鈍いくせに、そんな優しい言葉をかけないで。
大好きなんて言わないで。
そんなに強く抱きしめて、
唇が耳に触れるくらいの距離で、
わたしの、いちばん欲しかった言葉を、そんなに簡単に言わないで
――ごめんね。
わたし、あなたが居なくなったらきっと、とっても簡単に壊れてしまう。
ハッピーバースデイ、
『君が生まれてよかった』
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