7人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『元に戻って!!』
そんなあなたの悲痛な叫びを聞いた気がする。
電話越しのあなたは泣いていたのかもしれない。
頭がふわふわして、よく思い出せないのだけれど。
ごめんね
わたしはそう繰り返しながら、美味しいカレーライスが食べたいなあなんて、ぼんやり考えていた。
たぶん、二人で小さな森の小屋にでも住んでいたなら、こんなことにはならなかったのです。
あなたは木こりで、わたしは小屋で仔猫を抱いて編み物をします。
夕方になればあなたは小屋に帰ってきて、二人で温かいご飯を食べます。(もちろん猫には人肌温度のホットミルクを)
そうして夜空に星が瞬く頃には、わたしたちは一部の隙間もないくらいお互いをきつく抱きしめて、幸福のみに身を浸して眠るのです。
誰からも傷つけられることなく、
誰をも傷つけることなく、
ねえ?そうすれば、
何でかわからないのに愛しあってる互いを傷つけあうこともなく、
少なくともこんな、壊れてしまいそうにメチャクチャなときに機械を通した声しか聞けないなんて、寂し過ぎることにはならなかったはずなのです。
いったい、どこで間違っちゃったんだろうね。
あなたを傷つけ嫉妬されることでしか、あなたの愛に安堵できないなんて
何でもっと、素直になれなかったんだろう。
ただ、あなたはわたしだけを見ていてって、
どんな時でもわたしのそばにいてって、
そう言えばよかったのに
今からじゃあ、遅すぎるかなあ
ねえ、朝になったら、二人でどこかにでかけませんか?
黄金色の草原の真ん中で、飽きるまで抱きしめあいましょう。
お出かけから帰ったら、二人で夕飯をつくるんです。
メニューはあなたが大好きなカレーライス。
まだわたしが壊れる前に、あなたが食べたいと甘えたのに、一度もつくってあげれなかったね。
たっぷりニンジン、ざく切りタマネギ、ジャガイモ丸ごとコトコト煮込んで、
ひとくちスプーンですくって食べれば、きっと全部が上手くいく。
ほら、美味しいカレーの匂いがしてきた!
美味し過ぎて、指を切り落としちゃったらごめんなさい。
最初のコメントを投稿しよう!