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部屋に案内されたクレアとニースだったのだが、そこは今まで自分達が暮らしていた家のリビングよりも広く
かつ豪華であるという事実に『俺達は…場違いではないのか?』と思わせるには充分だった
二人は荷物だけを置いてデッキへと逃げ出した
船の柵越しに下を見下ろし、クレアは改めてこの船の大きさに気付かされた
下手なビルよりも高いのではないだろうか
「おいおい!ニースよ…ってアレ?」
ニースはいつの間にか消えていた
あいつもハーフっていう意識がないんじゃないのか
まぁ下手に探すよりも待ってるほうがいいよな
そう思いクレアは周りを見渡す
クレアは今、船首部分のデッキに立っているが
この位置は、高さから言えば中間の位置に過ぎない
船の上部にはもっとも広いスペースが取られていて
船の中央部にあり、船首よりも高く作られているのだ
ニースが戻って来たら一度行ってみよう
なんでもテニス場やクレー射撃もあるらしいのだ
なかなか発進しない船とニースを待っているだけのクレアにとって
この時間は非常に長く感じられる
ぼんやりと空を見上げていると
なんだあれ
青一色の空にひとつの点が存在し
近づいてくる
その時、クレアの目の前に急に手の平が現れた
パシッ
その手の平は、上にあるステージから落ちてきたと思われるテニスボールを掴んでいる
「君なんで避けないの?当たるところだったよ!」
「あ…あぁ!考え事をしてたもんで…助かったよ!」
クレアはボールよりも、目の前に急に現れた手の平に驚いていたのだが言わない事にした
「ところで君今暇してたりする?実は俺もなんだ~!俺は今から飲みに行こうと思ってるんだけど…一緒にどうかな」
比較的カジュアルな服装で話しかけてきた同い年くらいの赤髪の男
カジュアルと言っても高級なジャケットに身を包んでおり、それほど浮いているという印象は与えない
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