最後の器 金剛決闘

29/31
121471人が本棚に入れています
本棚に追加
/1361ページ
今までのトモの行動は全てシュウイチの意識を反らせる為の作戦だった。乱回転するシュウイチの攻撃を素手で受けめるという意外な行動に出てシュウイチの気を逸らし、更にあたかも今からニアナの攻撃が来るとシュウイチに思わせて防御させる。 そして、シュウイチが防御した隙をついてトモはシュウイチを攻撃し、完全にシュウイチの注目をトモに集中させる。 ニアナとハルナは炭素の壁に攻撃を続けているし、リクは意識を失っているためにシュウイチはトモの計算通り見事にトモに意識を集中させた。最も、シュウイチとしては、トモ以外に攻撃をされる心配がないと思っていた為、死んだ筈のハクの死体に等注目している筈もなかった。 「今まで暢気に死んだフリしていた雑兵剣士が、背中を見せた途端に斬りかかってきた。それだけの事だ!」 シュウイチは険しい顔をしながら炭素で傷口を覆いながらハクの追撃を回避し、ハクの刀に向かってチェーンソーのように回転するダイヤモンドを手裏剣のように投擲する。 シュウイチはトモが動けないことを確認し、トモの腕が届かない位置に移動しながらこれまでの流れを理解すると体を覆う全ての粒子を乱回転させ始めながらハクの動きを注視する。 ハルナが一番最初にシュウイチに矢を放ってきた時何本かの矢は的外れな方向に飛んでいった。だがそれは慌てて行動した為に的外れな方向に矢を放ってしまったのではなく、一本はハクに当たり、他の矢はシュウイチに見当違いな方向に矢を放ったと誤認させる為の物だった。 ハルナの矢が命中したハクの時間は戻り、ハクは自分の部屋まで戻されると共に空気の振動を操作したシノに密かに今までの経緯を説明され、シュウイチが隙を見せる時をずっと伺っていた。 だが、シュウイチは今まで隙を見せてはいたがその隙を餌に罠を張り、結果的に致命的な隙を見せる事はなかった。一度トモがシュウイチの装甲を破壊した時もシュウイチはハルナ達への警戒を怠ってはおらず、ダメージを受けたように見せながらトモが油断するように仕向けていた。 先ほどの攻撃もトモが注意を逸らさなければ、危うくシュウイチに反撃されハクは今度こそハルナの回復を受けられずに死ぬ可能性が大いにあった。 シュウイチの傷はかなり深いのか、シュウイチは一瞬よろめくが、直ぐに体を炭素で支え、危機的な状況にも関わらず笑みを崩さない。
/1361ページ

最初のコメントを投稿しよう!