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シュウイチは確かにリクが気絶している事を確認し終え、壁の向こうで三人が壁に攻撃を加えているのも確認する。
「これで、積みだ」
シュウイチはトモの目の前まで来ると腕を覆うダイヤモンドの粒子を乱回転させながら腕をゆっくりと近づけていく。
ゆっくりと近づいて来る手を見て何とかトモは壁から手を抜こうとするが炭素の壁は完全に固定化し、抜け出すことは不可能なようだった。
トモは諦めの表情を見せると共に固定されていないもう片方の腕に精神力を集中し始める。シュウイチはそれを見て前方からのトモの攻撃に備えながら、最低限の動作でトモに向かって腕を突き出す。
「な、に!?」
「へっ、死ぬ前に強敵に握手だ」
シュウイチは予想外の反撃を受けて驚いた、という訳ではない。むしろ反撃を受けなかったから驚いた。
トモは最大まで強度を高めた手で乱回転するシュウイチの腕を掴み、手をズタズタにしながらも受け止めて見せた。トモの手からは血が吹き出し、接触部分からは火花が絶えず飛び散る。
「ミンチだ、いくら固くしようと永遠に止められん」
シュウイチが更に腕に力をいれるとトモは痛みに呻き声を上げ、更に激しく出血する。
「この距離で、ニアナが大砲を撃ったら、受け止めれる、か?」
シュウイチはその言葉を聞いて即座に両腕を交差させる。シュウイチの現在の装甲があればほぼ確実に爆風は防御できるが、ほんの1%ほど防げない可能性があるので、シュウイチは万全を期したつもりだった。
「油断したな、うらぁ!」
その瞬間を逃さずトモが精神力を集中させた鋭い蹴りをシュウイチに放ち、シュウイチの脇腹に蹴りが命中する。しかしシュウイチは吹き飛ばない。それどころかダメージは全て金剛の粒子が吸収し、トモの足を包むダイヤモンドが乱回転を始める。
為すすべもなく千切れ飛ぶトモの足、そして吐血するシュウイチ。
「成程、ここまで計算通りか」
背中を血に染めながらも表情を変えずに呟くシュウイチの後ろにいる男は、一番最初に確かにシュウイチが殺した筈のハクだった。
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