『プロローグ-I-』

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今の時間は17時28分。 神社は相変わらず不思議な幻想を気取っていた。 自転車を止め、ぼんやりと光る箱の中を賽銭箱まで歩いた。 ここにOが?神社の裏へ周ると、確かに足跡が二つ、途中で途切れていた。 一つは大きく、一つは小さい。 これはどういう事なんだろう? その時、俺はちょうど17時半になったことを知った。 それは勘などではなく、急に辺りに桜が舞い始めたからだった。 季節外れの桜。 今は冬なのに…ぼうっとしていると、誰かが俺の肩を叩いた。 振り返ると、そこには170cm位の男が立っていた。 「こんばんわ」 奇妙な格好。 第一印象はそんな感じ。 何しろ変なマントに変な服…たとえるなら魔法使いみたいな… 「挨拶もできないのかい?」 「あ…こんばんわ…」 誰かは知らないけどもう17時半だ…Oは何処に? 「O君は居ないよ」 この人…Oのことを? 「Oを知っているの?」 「えぇ、あの子が連れって行っちゃったけど…」 「あの子?」 「まぁ、詳しい話は後で…。とにかく、此処にはO君は居ない。君を呼び出したのは僕…」 「何故俺を?そしてOは何処に?」 「まあまあ、O君は別の世界に居るよ。君を呼び出したのは必然というか…まぁいいのさ。とりあえず一緒に来てくれないかな?」 「嫌だ。昔から知らない人にはついていくなって習っていてね」 変な奴は静かに笑った。 「これを見ても…行かないといえるかな?」 男が出した手紙には俺にしか分からない暗号(中学生の頃考えたやつ)で書かれていた。 「…」 「行くかい?」 「…行く」 「OK、じゃあ手を…」 俺は黙って男の手を握った。 「ちゃんとつかまっていてよ?」 男が何かつぶやくと桜が一斉に舞い、俺と男を閉じ込めた。 この時、普通の俺だったら気が動転するはずだったが、この手紙の内容が頭をめぐってそれどころではなかった。 やがて桜が1枚、また1枚と散っていき、そこから奇妙な光景がのぞけた。
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