『プロローグ-O-』

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    《Oーside》 昨日とは打って変わって、雲ひとつない天気になった。 水たまりを飛び越え、自転車に跨る。   朝は嫌いです。 まるで私を嘲笑っているように思えてならないのですから。   学校に着くと…やはり誰もいません。 何故か早くに学校へ来てしまうのは変な癖で。   しばらくするとIが来ることは分かっていましたから、私は『俺』を演じる為の台本を頭で開き、何度も読み返しました。 昔から記憶力には自信がありました(無論、成績は優秀と呼ばれるランクに来ていました)。 故に、彼が私の予想以上に早く来ても…。 「よう」 存在感を放たない彼に私は気がつくことができず「よう」という挨拶に驚いてしまった。 「何だ、驚かすな」 「挨拶しただけだろう。そう驚くとは失礼だぞ」 ここでIという人物について少し説明しなければなりません。   彼は少し短気なところがあり、アピールの強い人間です。 疑う事をあまりせず、目上の人間と呼ばれる者の言う事を大抵信じます。 マイナスが嫌いなようで、それらをかえってプラスに変えることをする事が多いようです。 成績はさほど良いとは言えないが、多くの人間的スキル(話題など)を持ち合わせている(それ故に誤った情報も多いが)。 「はは、そう怒るなI。お前の存在感の薄さが悪いんだろう。俺は悪くない」 (この俺、というのが演じている『俺』の一人称です) 「ああそうですか。昔同じようなことを言われたよ」 彼は『昔』という言葉をよく使い、その昔に何か悲観的な事があったという事を伝えますが、何があったのかは知りません。  そんなやり取りをしていると、ぞろぞろとクラスメートが集まり、ホームルームが始まるのでした。 始めの授業は実習か…。
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